「期間限定」という文句に弱い。特にこの季節はスーパーのお菓子売り場に期間限定のさつまいも味のお菓子が並ぶので、さつまいも好きの私としてはついつい手が伸びてしまう。色んなお菓子があるけれどなんだかんださつまりこに落ち着く。さつまりこの期間限定って、いつまでなのだろうか。
柴崎友香『ビリジアン』(河出文庫)を読んだ。
主人公の少女の小学生から高校生までの日常が描かれている。だたし、順不同に。小学生だと思ったら、次は急に高校生になっていて、そうかと思ったらまた小学生に戻っていたり。視点は主人公のままだけれど、時間があちこちに飛ぶ。その辺りが何だか柴崎さんらしい気がする。主人公の日常は、ごく普通というか、私の学生時代にもそんなことがあったような気がすると思えるようなものなのだけど、これも柴崎作品らしく空や建物などの風景の繊細な描写にその光景が自然と目に浮かぶ。柴崎さんの小説を読むといつもそうだ。
普通じゃないところもある。主人公の前に有名人が姿を現すのだ。ジャニス(ジャニスとだけ書いてあるけど多分ジャニス・ジョプリン)やリバー・フェニックスやマーサ・プリンプトン。マーサ・プリンプトンは調べたら、リバー・フェニックス主演の『旅立ちの時』に出演していた女優さんだった。それなら観たことがある。私はリバー・フェニックスのファンだったから。
マドンナも出てくる。それがみんな関西弁を喋るのだ。例えばこんな風に。
「まあ、やりたいこととか行きたいとこがあるのは、ええことや」
マドンナは言って、次の駅で降りた。歩くのが速くて、本当に忙しそうだと思った。
あの人も出てきた。
「ボブさんは今何歳でしたっけ」
ボブさんはなにも言わなかった。無口な人なのかもしれなかった。わたしは自分のTシャツの赤色が眩しくて、目の奥が痛かった。
確かに無口な人なのかもしれない。ボブ・ディランは。
柴崎さんの小説は本当にいいなあ。読み終えてしまうのがもったいないような寂しいようなそんな気持ちになったので味わうようにゆっくりと読んだつもりだったけれど、あっという間に読み終えてしまった。
ビリジアン (河出文庫)買った本
『象牙色の嘲笑〔新訳版〕』ロス・マクドナルド、小鷹信光・松下祥子訳(ハヤカワ文庫)、『三茶日記』坪内祐三(本の雑誌社)購入。
ロス・マクドナルドは『さむけ』と『ウィチャリー家の女』を読んだ。文庫も持っている。『ウィチャリー家の女』は当時は新刊で買えたのにいつの間にか絶版になってしまったようだ。この『象牙色の嘲笑』もいつでも買えると思っていたらいつの間にか絶版ということもあるかもしれないと思って購入した。しかし文庫で千円はお高い。
常盤新平の『銀座旅日記』を読み返していたら、日記が読みたくなって『銀座旅日記』にも名前が出てくる坪内祐三の『三茶日記』を買った。日記は小説の合間につまみ読みするのにちょうどいい。
象牙色の嘲笑〔新訳版〕(ハヤカワ・ミステリ文庫) 三茶日記